浅田次郎 「珍妃の井戸」(講談社文庫)

2012年1月12日木曜日

歴史小説

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 「蒼穹の昴」と「中原の虹」の間に位置する 「珍妃の井戸」 をレビュー。

続編といわず、「間に位置する」といったのは、本作の微妙な感じを表現したつもり


義和団事件で列強の軍隊が北京の宮城の中に攻め寄せ、光緒帝や西太后など帝室が難を逃れるなか、光諸帝の愛姫の珍姫の謎の死を遂げる。その死の真相を、イギリスから派遣されたソールズベリー提督など列強から派遣された面々が探っていくという物語。


時代背景的には、「蒼穹の昴」の続きに当た理、登場人物も共通しているのだが、のだが、続編というわけではない。


筋立ては、前述のソールズベリー提督らが、珍姫の死に関わったであろう人物に次々と会い、その彼女を殺した犯人を捜していくといった形


で、構成を紹介すると


第1章 載沢殿下の舞踏会

第2章 誰が珍妃を殺したかーニューヨーク・タイムズ駐在員 トーマス・E・バートン氏の証言

第3章 老公胡同ー元養心殿出仕御前太監 蘭琴氏の証言

第4章 梟雄ー直隷総督兼北洋通商大臣兼北洋常備軍総司令官 袁世凱将軍の証言

第5章 魔宮からの招待状ー光緒皇帝側室 瑾姫殿下の証言

第6章 現場検証ー永和宮首領太監 劉蓮焦氏の証言

第7章 小さな悪魔ー廃太子 愛親覚羅侗氏の証言

第8章 天子


となっていて、そうそうたるメンバーへの聞き取りが続くのだが、聞き取りが進むにつれ真相がハッキリしてくるかと言ったらそうではなくて、ますます混迷してくる。


有り体に言えば、聞き取りの順番が、犯人と名指しされていく順番といえばいいのだが、その様子を読んだところで、誰が珍姫の死の現場に立ち会っていて、誰の言うことが真実なのか、正直のところ、最後の最後に至るまで、五里霧中の中で読み進めていかされる。


で、最後の最後、嘘をつくことが許されない皇帝という立場にある光諸帝が名指しする犯人とは、といった感じで最終章に至っていくのだが・・・。


珍妃暗殺は西太后の命令によるという話が一番有力らしいのだが、いまだ真相は明らかになっていない。


ネタバレ承知で言えば、このあたりの真相を明かす歴史ミステリーと思って読んだら間違い。義和団事件によって殺されたのは誰、あるいは何だったのか、というところか。


歴史小説というより、清朝滅亡という大歴史ドラマの中の異譚として読むべきか・・・。


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日本の人口最少県の住人。なりわいは行政書士。読書好き、ガジェット好きの昭和人です。

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