和田はつ子「料理人季蔵捕物控22  ゆず女房」、「料理人季蔵捕物控23 花見弁当」(時代小説文庫)

2018年5月6日日曜日

和田はつ子

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 長崎奉行を務めたこともある名門の大名家を訳あって許嫁とともに出奔した侍・堀田季之助が名を「季蔵」と改め、日本橋木原店にある一膳飯屋・塩梅屋を継いで、「刀」を「包丁」にもちかえて、料理に腕を振るうかたわら、町奉行所に協力して江戸の闇に潜む悪党をこらしめる料理人捕物帳「料理人季蔵捕物控」シリーズの第22巻~第23巻


腕利きの出張料理人の隠された真の姿は? -- 「料理人季蔵捕物控22  ゆず女房」

長く続くシリーズものの登場人物は、とかくマンネリ化してくるもので、読者としては定期的に新キャラの投入を望みたいところなのだが、それが定着するキャラに育つかどうかは、作者のお好み次第というところであるらしい。
 
収録は
 
第一章 冬どんぶり
第二章 河豚毒食い
第三章 漬物長者
第四章 ゆず女房
 
となっていて、今巻の読みどころは、武藤多聞がキャラとして定着できるかどうか、といったところであろうか。
 
まず第一話は、「冬うどん」こと「鶏団子うどん」で名物ランチの評判をとった塩梅屋が、今冬のランチで再びの高評判を勝ち得る料理をつくれるかというもの。料理を考案する過程で、長崎屋のお内儀が酒浸りになっている、という相談事の解決を図るのだが、女の嫉妬とは粘っこいなと想わせる結末。
さらには、今回名物ランチになる「冬どんぶり」こと「葱たま丼」に必要な卵の仕入先も巻き添えにしてしまう。年寄りが熟れ頃の女性に惚れ込んでも甲斐がないかも、という決着はちょっとさびしい。
 
第二話は、北町奉行の烏谷の依頼を受けて、季蔵と武藤が、セレブが通うふぐ料理屋の宴席の手助けをする話。もちろん、宴席が無事に終わるはずもなく、旗本のお家騒動も絡んで、血なまぐさい展開になるのは、捕物帳の宿命か。
 
湯引きは三枚に下ろしたふぐの上身を、厚めにそぎ切りした後、皮と一緒に湯に潜らせ、水で晒して、紅葉ろしや酢醤油をつけだれにして食べる。
(中略)
かね炊きとのほうは骨付きぶつ切りの身を、つぶしたにんにくと梅干しと一緒に醤油で煮つける
 
といったふぐ料理に免じて、話の陰惨さも我慢しようか。
 
第三話は、季蔵の旧友・豪介の女房おしんの取引先の漬物屋・野もと屋の主人の失踪事件の解決譚。この主人、仙台が旅の途中で連れ帰った出所不明の人物で、漬物の仕入れにも一人で旅するという変わり者。彼の失踪の陰に隠された過去は、といったもの。これに役者くずれの煮売屋の亭主の失踪+死亡事件がからんでくる。およそ関係なさそうな二人なのだが・・、といった展開。
作中の
 
柿なら何でもいいから、熟れたら、へたを取って、砂糖と焼酎、それに刻んだ唐辛子を放り込んで、漬け床をつくるんです。三月もおいておくと、これ、柿酢になるんです。
 
という柿酢で大根をつける「大根の蒸し柿漬け」のように少々複雑な人間模様である。
 
最終話の「ゆず女房」は、扇屋・錦堂のお内儀の「ちぐさ」が庭先で凍死するのだが、彼女の身体にはひどい折檻を受けた後が残っていて・・、というところから始まる。

もちろん、彼女を利用して性欲を満足しているゲスなセレブがいるのだが、彼女を死に導いたのは、なんとあの・・、といったところで手を下した人物とその正体は原本で確認あれ。

話を彩るのは、武藤の妻・邦恵の「ゆず料理」で柚子味噌、柚子大根、ゆべしと種類豊富なのだが、どうしても侘しさが漂うのは、話のすじのせいか、あるいは柚子の性格のせいであろうか。
 
さて、20話あたりから、新キャラが登場するも、この巻あたりまでで精算が相次ぐ。健在な女性キャラは、「おき玖」と「瑠璃」。さて二人と季蔵との関係はいかなることになりますやら。

「白犬」に導かれて、「善光寺」ならぬ「殺人」巡り -- 「料理人季蔵捕物控23 花見弁当」

気のあった料理人仲間であった武藤が行方をくらまし、心にすきま風が吹いている季蔵であったが、一人花見に出かけた先で、本巻の新たなキャストに出会うことになる。それは、なんと「白犬」である。
 
構成は
 
第一話 花見弁当
第二話 江戸っ子肴
第三話    若葉膳
第四話 供養タルタ
 
となっているが、今回も一話完結ではなく、一巻完結の話。
 
まずは、季蔵が霊岸島へ花見に出かけるところからスタート。花見の料理は、さすがというべきか、「鶏肉の柚酒焼き」「豚肉の柚酒煮 」という豪華版なのだが、そこで出会った白犬にほとんど全てを食べられてしまう。しかもこの犬、料理の気に入り具合を吠える回数で表現するという生意気ぶりである。
 
第一話の本筋の事件は、呉服問屋の手代・長助が酒に酔って変死するものなのだが、この花見の時に登場する、塩梅屋の近くの煮売屋親子が、この巻での重要な配役となるので覚えておこう。ちなみに、この煮売屋の娘が、死んだ長助に惚れていたのだが、この長助、あちこちの娘から菓子やら甘酒やら煮売やらの食べ物を貢がせていたという、野暮なんだがどうだがわからない色男である。
 
第二話は、事件のほうは、上方からの下り酒を見せ金に、水で薄めた酒を高価な値で売り払うという騙し蔵の詐欺に関連する殺人事件なのだが、メインは、蔵之進の配下を務める、ベテランで腕利きの亀吉親分の引退お引き止めようと、江戸っ子の粋を集めた宴席を設ける話。

提供される料理は、   「江戸っ子膳」と銘打って「意図ミス場の刺身風、納豆の卵巻き、蒟蒻と胡桃の酒粕和え」「鰹の江戸風味」「豚肉の柚子煮」「烏賊の共焼き」「エビの天麩羅江戸っ子風」「白独活とワカメの酢の物」「鮪のきじ焼き風茶漬け」で、なんとも粋なもの。

この時点で煮売屋の娘は  という店に奉公していて、しかも、その店の若旦那に見初められて、というなんだか嘘っぽい話。こういう、惚れっぽいが、純粋な良い娘にこの作者は手厳しいので、注意が必要であるな。
 
第三話は、その宴席の話がメインで、煮売屋の娘・桃代の奉公先・みやび屋の若旦那・慎吉が誠実そうな雰囲気を醸し出すが、さて本質はどうか気になる所。

この話の最後で、前話で復帰することを誓った亀吉親分が卒中死する。彼が宴席の最後に喋る「友人を石見銀山で毒殺した子供」のエピソードがどこで関係してくるのか、そして、騙し蔵の殺人に関わりのありそうな京風の着物を来た美人の年増女の正体も、ここではまだ謎のまま。
 
第四話は、その桃代の嫁取りにみやび屋親子がやってくる時の料理に「茶」をつかったものを季蔵が考案しているうちに、みやび屋の主人が心臓病の発作で突然死、さらには、お内儀のはな江が毒殺。犯人の疑いのかかる桃代は近くの稲荷神社で自殺、とやたらと人死にが出る。

この一連の事件の鍵となるのは、騙し蔵の事件で出てきた「年増女」なのだが、性の趣味の違いと身近なところに犯人がいる意外さに驚くが、真相は原作でご確認を。
 
さて、見目の良い男には、とんでもない裏がある、というのが印象的な本巻。そういう類の男に騙される娘たちが、哀しいですな。



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日本の人口最少県の住人。なりわいは行政書士。読書好き、ガジェット好きの昭和人です。

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