和田はつ子「料理人季蔵捕物控25 かぼちゃ小町」、「料理人季蔵捕物控 26 恋しるこ」、和田はつ子「料理人季蔵捕物控27  あんず花菓子」(時代小説文庫)

2018年6月5日火曜日

和田はつ子

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長崎奉行を務めたこともある名門の大名家を訳あって許嫁とともに出奔した侍・堀田季之助
が名を「季蔵」と改め、日本橋木原店にある一膳飯屋・塩梅屋を継いで、「刀」を「包丁」にもちかえて、料理に腕を振るうかたわら、町奉行所に協力して江戸の闇に潜む悪党をこらしめる料理人捕物帳「料理人季蔵捕物控」シリーズの第25巻~第27巻

長次郎ゆかりの熟柿泥棒の陰に悪人組織が巣食う -- 和田はつ子「料理人季蔵捕物控25 かぼちゃ小町」


第一シリーズの第25弾となる本巻では、前巻まで、未解決となっていた不審死の真相が明らかになる。
 
構成は
 
第一話 あま干し柿
第二話 秋すっぽん
第三話 かぼちゃ小町
第四話 もみじ大根
 
となっていて、まず第一話では長次郎ゆかりの熟柿が盗まれる所からスタート。犯人は大金を積んでも口に入らない食通・豪商あたりの差し金かとみえて、熟柿つくりの肝の座布団が捨てられていたり、といったことで、もっと深い陰謀がありそうな風情である。この盗難事件での不幸中の幸いは、北町の隠密同心・伊沢蔵之進ゆかりの「干し柿」の製法が手に入りそうなあたりか。
 
第二話はちょっと舞台が変わって、瑠璃の滋養のために飲ませている「すっぽんの血」を提供してくれている、すっぽん屋の娘・楓の奉公先の料理屋・四季屋の主人殺し。四季屋の主人には、仕入れ・やりくりといった経営から、客の差配まで仕切っている、三十過ぎの美女・理彩がいるのだが、まあ、こういうキャラに対する作者の態度は、このシリーズの読者であれば、もうお分かりですよね。
 
第二話の四季屋の殺人事件の真相も明らかにならないまま、話は十年前の「かぼちゃ小町」といわれた八百屋の娘が、婚約者から折檻されて殺された疑いのある事件の再捜査へ横展開。
 
最終話の「もみじ大根」で、消化不良のまま展開してきた今巻の事件を含め、前巻、前々巻での米沢屋の事件やお連の変死といった”指掛け”になったままの事件をはじめ、10年前のかぼちゃ小町の事件以降の不審死の犯人が明らかになる。その相手は、なんと甲賀者まで引っ張り込んだ、結構大掛かりな設定の悪党なのだが、「天下の大乱」とならないのが、このシリーズが市井の捕物帳であるせい。上田秀人の「加賀百万石」などとはここが違うところである。
 
さて、今までの悪党退治は、出張というか、悪党の根拠地に出張っての立ち回りで、塩梅屋や元許嫁の瑠璃が養生させてもらっている、お涼さんの家は、安全な居場所であったのだが、今巻から、ここまで戦線が広がってきた展開である。次巻以降、どんな悪役キャラが登場してくるでありましょうか。

大店の婚礼話には事件がつきもの -- 和田はつ子「料理人季蔵捕物控26 恋しるこ」

さて、今回の料理人季蔵シリーズの収録は
 
第一話 師走魚
第二話 兄弟海苔
第三話 新年薬膳雑煮
第四話 恋しるこ
 
となっていて、どちらかというとそれぞれが独立した単話仕立て。
 
まず、第一話は、両替屋・千田屋の法要料理を塩梅屋が務めることになったのが発端。ただ塩梅屋のような一膳飯屋の進化系のような店が選ばれたのは、「生鮭をつかった尽くし料理」という、およそ仏事とは思えない注文である。
 
その原因は、千田屋を仕切っている、隠居している祖母の「梅乃」にあって、彼女が婿を以前虐めて事故死させたことが素で、鮭フリークになったことのあるおとがわかる。季蔵が、口うるさい隠居婆さんを満足させるため、試作を行っている最中、高価な珊瑚の簪が届く。千田屋の孫娘・千恵の婚礼祝らしいのだが、さて、送り主は、といったところで今巻の事件の幕開け。
 
千田屋の孫娘・千恵が、死んだはずの自分の父親からプレゼントだ、と主張するので、珊瑚の贈り主を探しを始め、代書屋の勇吉という男に行き当たるが、彼は、女誑しの「ごろつきの芳三」殺しの犯人としてしょっぴかれるところを、季蔵が、間一髪、真犯人を見つけ出す、というのが第一話の展開。
 
第二話は第一話の「芳三殺し」で、勇吉の無実を晴らしてくれと、季蔵に頼んだ、「五吉」の十数年前の母親殺しの再捜査。ここに、海苔屋・浅草屋の15年前の大店の神隠しが絡むのだが、これは次話以降へのつなぎであろう。
 
さて、引き続く第三話では、同じ婿取り話として、薬種問屋の鈴鹿屋の婚礼に関連する事件。
鈴鹿屋の跡継ぎとして養女の入る姪の「さつき」のところに「殺人予告」の手紙が入るのが発端なのだが、この家の場合、昔の奉公人の孫娘というふれこみの「奈美」という娘が、あっけらかんとした明るい美人娘で、婿になる予定の医家の三男坊の長岡仁太郎とくっついてしまったどころか、店の実権をもつ「お世津」のお気に入りでもある、という複雑な人間関係である。
こういうときに起きる事件は、お決まりで、女主人の「お世津」殺しなのだが、ついでに奈美も巻き込まれる。あっけらかんとした「天然」の美女に「冷たい」のは、このシリーズの特徴であることを、ここでも立証してますね。
 
最後の第四話は、この時代、島送りの次の悪名の高い「寄せ場」で白骨死体と抜け穴がでてきたというところから事件は始まる。その陰に、15年前の、天女と呼ばれたお汁粉屋の小町娘と、男前の火消しの恋話がありそうな、というところで話は展開するのだが、ひさびさに想いあう男女に優しい幕切れではありますね。
 
さて、今巻では、江戸の巨悪が登場せず、色欲、金欲にかられた小悪党の退治が主であるのだが、犯行の原因が欲まみれであると、なんとなく事件も脂ぎって、ベタつくのであるが、これも浮世の常なんでしょうかね。
 
最後に、今巻での特筆料理は、各話の表題とは異なる「塩梅屋の風呂ふき大根」。「林巻大風呂吹大根」というもので
 
練り味噌は鍋に赤味噌m白味噌を入れて混ぜ、味醂、酒、すった白胡麻を加えて火にかけてどろりとさせておく。
大根は、爪の先ほどの厚さに桂剥きした大根に酒を振り、それをゆるめに蒔き直しぐるりと糸で結び、強火の蒸籠で蒸し上げる。
器に練り味噌を敷き、糸を外して大根を盛り付ける。柚子の皮または練り辛子で風味と彩りを添える
 
という凝ったもの。今巻の鮭とか汁粉がどうも当方の気を惹かなかったので、塩梅屋定番の料理の紹介としておきました。

「おき玖」ちゃんも、ようやく幸せになれそうですな -- 和田はつ子「料理人季蔵捕物控27  あんず花菓子」

巻を重ねてきた、このシリーズなのだが、今巻でひとまず第一シリーズが完結。
 
収録は
 
第一話 高輪御膳
第二話 名残り魚
第三話 あんず花菓子
第四話 彼岸鮨
 
となっていて、まずは、日本橋の米問屋・加嶋屋が、俳諧仲間の会合で、塩梅屋に「鯛つくし」の料理を依頼してくるところから始まる。

この俳諧仲間というのが食通の集まりで、瓦版でも取り上げられる、ちょっと小うるさい存在。しょうがなく依頼を受けた季蔵なのだが、その宴会の席に浪人者が押し入り、彼らや季蔵を人質にとり「二日前の塗り物問屋・野沢屋に届いた文箱を差し出すこと」「二十年前の、迷宮知り事件の下手人を差し出すこと」といった奇妙な要望を出す。

この要望を奉行所が対応しているうちに、俳諧仲間の一人で、早出し青物の卸元・青田庵のおはるが乱暴されたりするのだが、浪人たちの出した条件の「二十年前の迷宮入り事件」に、おき玖が関係いそうで・・、といったのが第一話。
 
第二話の「名残り魚」は、救出後、静養中のおき玖の留守中に、季蔵が「黒鯛」の料理の考案をするかたわら、第一話の事件の裏をあれこれと推理するもの。気になるのは「黒鯛(チヌ)」料理で、残念ながら、季蔵の考案するものより、長次郎の料理日記に記録された、「さつま」という
 
チヌの身をすり鉢でよく当たり、木杓子にうけて軽くこbげ目をつけた味噌を加え、冷ました出汁で少しづつ伸ばす。
炊きたての飯にこれをかけて小口切りの葱、すり胡麻をのせる
 
という料理の方が魅力的。
 
第三話は、第一話で不幸な目にあった青田庵のおはるへの見舞いに、あんずを使った菓子を考案するとことからスタート。この青田庵が扱っている「あんず」の仕入元の藩で、どうやら御公儀へ上訴するほどの圧政が行われている気配がある。これに絡んで、第一話の俳諧仲間の一人の結城屋や、前述の青田庵におはるの殺人事件や老人ばかり殺される連続殺人の謎をとくのが第四話という展開。
 
ここで、第一話の「二十年前の迷宮入り事件の下手人を差し出せ」という要求の裏の理由がわかるのだが、これはちょっと難癖っぽいな。
 
さて、第一シリーズ完結ということなのだが、あまりネタバレしてもよくない。「完結」のわけは、おき玖ちゃんの目出度い出来事、とだけ言っておこう。おき玖ちゃんは、シリーズの最初の方で、幼馴染との恋が散った経験があるので、まあよかった、よかったですな。
 

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日本の人口最少県の住人。なりわいは行政書士。読書好き、ガジェット好きの昭和人です。

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