京都の闇は陰謀を隠しているー上田秀人「動揺 聡四郎巡検譚 3」「抗争 聡四郎巡検譚4」(光文社時代小説文庫)

2019年11月22日金曜日

上田秀人

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 「江戸」と「東海道」と二部構成で展開をし始めた、「聡四郎」シリーズの3season「聡四郎巡検譚」の第3弾と第4弾


第2巻で用意されていた「吉宗暗殺事件」がとうとう勃発して大バトルへ進んでいくことになるので、時代小説のバトルシーンが楽しみなファンにはもってこいの展開となっている。


吉宗暗殺の陰謀の結果は? ー 「動揺 聡四郎巡検譚 3」

「江戸」と「東海道」と二部構成で展開をし始めた、「聡四郎」シリーズの3season「聡四郎巡検譚」の第3弾。

今巻では、第2巻で用意されていた「吉宗暗殺事件」がとうとう勃発して大バトルへ進んでいくことになるので、時代小説のバトルシーンが楽しみなファンにはもってこいの展開となっている。

また、聡四郎も京都入りして、複雑な職制の江戸幕府の中でも、とりわけ複雑怪奇で、権力構造もよくわからない「朝廷」「公家」の様子も解説されているので、歴史の「ウンチク」を溜め込みたい方にもおすすめの出来となってます。

【構成と注目ポイント】

構成は

第一章 叛意あり

第二章 忍の矜持

第三章 目付の意義

第四章 京の役人

第五章 古都の蠢動

となっていて、まず今巻の第一のヤマ場である「吉宗暗殺」事件の勃発から始まる。


暗殺を企てるのは、尾張藩主・徳川継友を将軍位につけようとする尾張藩の家臣たちであるのだが、こうした暗殺犯が苦もなく、江戸城内に入れてしまう警備体制はちょっとヒドイな、と思う次第。吉宗が幕府の行く末を心配するもの無理ないかな、というところですね。

戦闘シーンのほうは、御庭番と暗殺犯との闘争あり、吉宗が「暴れん坊将軍」の本領発揮で、新陰流の免許皆伝の腕を見せつけたり、吉宗の側に仕える「小姓」たちが暗殺集団に蹴散らされるだらしなさであったり、とてんこ盛りの展開になってますので、間違いなく楽しめます。さらには、この吉宗暗殺未遂がきっかけで、聡四郎を陰湿に付け狙い、目付の地位がこの世で一番エライかのような振る舞いをしていた「野辺三十郎」が徳川吉宗によって「ぺしゃん」と潰されてしまう、というところまで用意されていて、ひさびさの爽快感がありますね。

聡四郎の「旅」のほうは、いよいよ京都入り。ここで、吉宗から「しばらく京都に滞在せよ」と命令が入って、京都所司代のところに顔を見せたり、以前「竹姫」の輿入れの根回しに訪れた竹姫の実家・清閑寺大納言家を訪問したり、といったことをするのだが、これがまた周囲に不必要な波紋をなげかけて・・、という、この聡四郎シリーズに特有の事態が起き始める。前シリーズでも、御広敷伊賀者をはじめ、あまり深く物事を考えていない聡四郎の行動を深読みしすぎて墓穴を掘り始める、ということがこのシリーズの特徴の一つなのだが、禁裏付、京都町奉行といった京都の「お役人」たちもこの「罠」にはまってしまったようで、聡四郎一行に不要なちょっかいを出し始めます。


【レビュアーから一言】

吉宗を狙った尾張徳川家の後始末を命じられるのが、尾張藩の附家老の成瀬隼人正で、こうした附家老をはじめとした、徳川の御三家の家臣の旗本への心理的な確執というのは、上田秀人さんの作品で結構扱われているのだが、士農工商という身分差別をはじめとして、こうした「差」を巧妙に利用した「徳川幕府」の支配構造っていうのは、誰が考えたのかしらないが、人間の「心の闇」のところを巧妙に利用した制度だなーと思いますね。こうした江戸時代に構成された精神構造っていうのは、「本社と支社」「官と民」などなど現在の私達の制震構造にもあちこち痕跡を遺しているように思えるのですが・・・


水城聡四郎、京都の裏の姿に出会う ー 「抗争 聡四郎巡検譚4」

勘定筋の家の出身ながら、冷や飯ぐらいの身の上であった、水城聡四郎が、兄の死によって家を継ぎ、新井白石、徳川吉宗によって能力を見いだされ、勘定吟味役、御広敷用人として、幕府の要人や御用商人、あるいは伊賀者の企む陰謀を打ち砕いた後、「道中奉行副役」に任命され、諸国を巡って、道中の悪党を退治する「聡四郎巡剣譚」の第4弾。
前巻で、将軍・吉宗から、「しばらく京都に滞在しろ」という命令を受けて、京都の「裏」の姿を体験するのが今巻である。

【構成と注目ポイント】


構成は

第一章 遠国の風景
第二章 都の一日
第三章 無頼の生き方
第四章 各々の動き
第五章 新しい走狗

となっていて、「京」を知るために、炭問屋の「出雲屋」に接触にところからスタート。この出雲屋、「応仁の乱」のことを「前の戦」というぐらいの京都の水が骨の髄まで染み込んでいる京都商人なのだが、「公家たちは平氏の頃から六百年間、政にして」おらず、彼らに政権を渡せばm
、京都は荒れ果ててしまうと予測しています。このへん、明治維新後の「京都」を看破しているようでもありますね。「京都」というのは、「幻想の都」であるときが、一番、力をあちこちに及ぼすところかもしれません。

話のほうは、出雲屋に案内されて、聡四郎は、京都のお茶屋さんとか、一見さんでは足を踏み入れることもできないところを尋ねます。ここで、吉宗の推進する倹約令の批判とか、江戸・大阪の商人と京都の商人の違いとかが語られるのですが、吉宗批判のあたりは、前シリーズではなかなか聞けないところで、ここらが「日雇い浪人生活録」あたりに引き継がれていますね。

そして、出雲屋に茶屋に案内された聡四郎のもとに、京都町奉行が密かに支持した京都の裏稼業の男たちがやってきて、あっという間に撃退されたり、無頼を使った同心を町奉行が隠そうとして、聡四郎の正義感にふれて逆襲にあったり、といった、上田ワールド特有のスッキリするシーンはきちん用意されているので、そのへんは安心してお楽しみください。

というものの、いままでなら、自分が剣をふるって、奸計をめぐらした者たちに向かっていくのが通例であったのだが、本巻あたりから、京都町奉行や京都所司代に対して、吉宗の威光をバリバリに使うあたりに、彼もかなり経験を積んできた感じを伺わせます。

物語の後半のほうでは、吉宗の治世で名高い、大岡越前守が登場してきます。TVドラマでは、吉宗の抜擢で颯爽と任についた感じがあるのですが、本書では、先任の南町奉行を、無理に引退させての就任であるとかあって、けして、吉宗の統治がトントン拍子に進んだわけではないことが伺えます。

【レビュアーから一言】


この巻では、京都で聡四郎たちを襲う、京都の無頼が雇った剣の腕の立つ浪人とのアクション以外に、吉良上野介の旧家臣たちが、吉良本家の復活を企んで、聡四郎の江戸の家に押し込み、娘をさらおうとするアクションシーンが展開されます。もちろん、相手のアクションではなく、聡四郎の剣の師匠・入江無手斎とかくノ一あがりの侍女・袖の腕の冴えとかが楽しめます。

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日本の人口最少県の住人。なりわいは行政書士。読書好き、ガジェット好きの昭和人です。

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