お家騒動の最中で見せる義将兄弟の意気地とは?ー赤神諒「大友二階崩れ」(日本経済新聞社)

2020年8月14日金曜日

赤神諒

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 戦国ものというと、信長・秀吉や家康が活躍した畿内や尾張・三河を中心としたものか、最近では戦国下剋上の先行馬となった北条早雲あたりまでがメジャーなところで、九州を舞台にしたものというと、関ケ原で敗れてもなお、徳川家を恐れさせた島津義久を描いた池宮彰一郎さんの「島津奔る」とか、佐賀の龍造寺家と鍋島家の抗争を描いた滝口康彦さんの「落日の鷹」といったものが目立つぐらいなところです。


そうした中、中国地方の戦国の雄である大内家や毛利家とタメに張り合っていた北九州の戦国の名家「大友家」の内紛とそれに巻き込まれた重臣・吉広鑑理とその弟・鑑広を軸に、主君への忠義、裏切りとともに「家」を守っていく戦国武将の姿を描いたのが、本書『赤神諒「大友二階崩れ」(日本経済新聞社)』です。


【構成と注目ポイント】


構成は


第一章 大友二階崩れ

一 大友館

二 主命

三 貴船城

四 戸次川

五 先主の遺臣

六 二人の軍師

第二章 天まで届く幸せ

七 星野谷

八 天念寺

第三章 一本道

九 比翼の鳥

十 義と愛と

第四章 反転

十一 初めての嘘

十二 誰がために

第五章 鑑連の手土産

十三 秋百舌鳥

十四 義は何処にありや


となっていて、時代的には戦国時代の末期、天文19年(1550年)に起きた、大友家内の家督騒動がもとで起きた抗争劇(二階崩れの変)の前後の大友家の譜代の重臣である吉弘家の興亡の物語です。


この「二階崩れの変」というのはキリシタン大名で有名な「大友宗麟」の父親で先代当主の義鑑が、当初後継ぎと決めていた宗麟(当時は義鎮)を廃嫡して、愛妾の産んだ異母弟に家督を譲ろうとしたことを契機に、宗麟派が叛き、逆に義鑑派を粛清してしまうというもので、典型的なお家騒動ではあります。畿内・東海あたりの戦国物語であれば、周囲からあの手この手の調略の末に、戦乱が起きるのが常なのですが、大友家自体が安泰だったのは「幸運だった」といえますね。


ただ、この内紛に巻き込まれた本書の主人公・吉弘鑑理は、主君・義鑑の命令で宗麟派の実力者である旧友・斎藤長実を自らの手で始末させられたり、それがもとで義鑑派とされ、宗麟派から糾弾され改易の瀬戸際まで追い詰められたり、と散々な目に合うこととなります。


この状況になっても、旧主を貶めることを良しとしない吉弘鑑理に対し、弟の鑑広は「吉弘」の家を守るためであれば旧主を裏切っても新しい主君・宗麟に味方すべきと主張します。展開次第では「吉弘家」が分断する状況を迎えるのですが、このお家騒動の機会に乗じて、大内など他の勢力と結びつき、大友へ謀反を起こした者の討伐軍に加わることとなるのですが、途中、新主君・宗麟が危うくなる「罠」を発見します。しかし、主君を救おうとすれば、敵に囲まれている弟を見捨てざるをえないのですが・・・、という展開です。


話の方は、先代の主君に従うとみせかけて主君を裏切った末に勝利者側の有力者として台頭する縁戚・田原宗亀とか、吉弘家が反乱に加担したとして糾弾され始めるとしれっと裏切って、糾弾側のところに転がり込む昔から仕える配下の武将・萩尾麟司といったキャストが、性格が真反対な吉弘兄弟の周囲で暗躍して、いやーな感じを振りまいてくれるかと思えば、謀略の才がありすぎて今まで信用できなかった旧主の軍師や、譜代の家臣でないにもかかわらず吉弘家の存続をするため、あらゆる謀略を講じてくれた末に、邪魔にならないよう暇をとろうとする鑑理の家臣・世戸口紹兵衛にスッキリしたりとか、多彩なキャストの活躍で読みどころ満載の筋立てとなってます。


なかでも、吉弘家改易の急先鋒とされ、改易後はその領地を報償としてもらいたいと広言する、大友家の猛将・戸次鑑次(後の立花道雪)の本当の意図が最後のところで明らかになるのですが、その結末は読んでのお楽しみということで。


【レビュアーからひと言】


史実によると、本書の主人公・吉弘鑑理は大友宗麟の側近として仕えた「豊後の三老」ともいわれる智勇兼備の武将といわれていたらしいので、案外に本書で描くよりもっと武張った人だったかもしれません。

彼の次男の子が本書で吉弘家を救った戸次鑑次(立花道雪)の養子になり、剛勇で知られるとともに、関ケ原の合戦で取り潰された後、大阪冬の陣の功績で旧領の柳川藩主に復帰

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日本の人口最少県の住人。なりわいは行政書士。読書好き、ガジェット好きの昭和人です。

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