佐々木裕一「公家武者 松平信平 7 十万石の誘い」、公家武者 松平信平 8 黄泉の女」(二見時代小説文庫)

2018年1月14日日曜日

佐々木裕一

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徳川家光の正室・鷹司孝子の弟で、公家の婿になったり、坊主になることを嫌った鷹司信平が、江戸へ下り、家光からわずか五十石の石高で旗本に召し抱えら、当時は草深かった深川に屋敷をもらったことからスタートして、幕府の転覆を狙う豊臣の残党や江戸を荒らす盗賊たちを相手に、獅子奮迅の活躍をして出世していく「公家武者」シリーズの第7弾と第8弾

  

いずれの時代も、大災害の後は事件が多数発生 -- 佐々木裕一「公家武者 松平信平 7 十万石の誘い」

さて、公家武者シリーズの第7巻は、「振り袖火事」の後、まだ災害の余波が治まっていない江戸での様々な騒ぎや悪行を鷹司松平信平が平らかにしていく、といった構成。

 
第一話 信平、大名屋敷に乗り込む
第二話 十万石の誘い
第三話 土地争い
第四話 酔いどれ兵部
 
どことなく「若手・水戸黄門」といった風情の出てきているのは、「良家の若様」の活躍物語というおおもとの筋立てゆえしょうがないところか。
 
まず第一話は、寺津藩の国家老の放蕩息子の悪行を、信平が懲らしめる話。この男、火事後の屋敷の建て直しで、人足の目付けに国元から派遣されたのだが、下屋敷で暮らすうちに賭場に出入りし、女遊びにふけり、といったところで、「遊蕩」の血はなかなか治まらないというわけか。で、この国家老の息子が、前作で長屋作りに世話になった弥三郎の想い人に懸想して、妾にしようと狼藉をはたらこうとするので、しっかりと懲らしめられるという筋。
 
第二話の「十万石の誘い」は、今回の火事で跡取り息子を亡くした大名家の跡取りに、信平が望まれる話。本来なら、紀伊大納言の娘を娶っているので、こんな話にはならないのだが、所望した相手方が、名門結城家ゆかりとあって、ことが面倒になる話。
 
第三話の「土地争い」は、火事の後にお決まりの「土地の境界争い」。争いの主は、父親同士は仲が良かったのだが、息子・娘の代になってから反目ばかりをしている蝋燭問屋と油問屋。ただ、諍いの主の片方の油問屋の娘は、相手が嫌いというわけでは・・、といった、よくある恋愛ものでもありますな。
なお、この話から、信平と松姫は晴れて同居。家臣も増えるのだが、幕府の監視の目に加えて、隣屋敷の紀伊大納言の監視の目もきついようですな。
 
最終話は、酔っ払うと剣豪になる浪人者と善右衛門の交流を書いた話。浪人の息子の仕官に絡んで、その息子の通う剣術道場の先輩たちや盗賊たちとの大立ち回りは、この話のお決まり。盗賊の頭の名は「蛇の権六」といわれる執念深い、忍び崩れの盗賊なのだが、「蛇の権六は、抱いていた若い男の裸体から離れると、襦袢を腰に巻いて手下どものもとへ出て来た。・・・徳利の酒をぐびぐびと呑んだ権六は、怯えた目を向ける門弟の前に立つと、鉄漿に染めた歯を見せて、不気味に笑った」という記述に出くわして、「盗賊は男」と決めてかかる、当方の考えの固さに反省いたす。
 
さて、今回のシリーズとしてのトピックは、晴れて松姫と同居を始めたといったところだけで、今巻の主たるところは、江戸の火事後の信平の活躍譚。もともと、肩の凝るシリーズではないので、さくさくと信平の活躍をお愉しみあれ。

美人の女盗賊は処刑後もいろいろ騒ぎをおこすのであった  -- 佐々木裕一「公家武者 松平信平黄泉の女」

公家武者シリーズの第8巻目は、前巻の女盗賊の話の後日談。

収録は
 
第一話 黄泉の女
第二話 雷鳴
第三話 駆け落ち
第四話 追い出された大名
 
となっていて、後日談は第一話、第二話。
大筋は、処刑されたはずの女盗賊「蛇の権六」が蘇ったのか、そっくりの盗賊が彼女の取り調べと処刑に関わった役人たちへの復讐を始まる。当然、権六の捕縛と彼女の鼻柱を潰した「お初」にもその手は及び、さらには信平も襲われるのだが、その陰で盗賊たちを操るものは・・・、といったもの。
悪党とはいえ、美人には弱いのが本書のお決まりで、権六が盗賊を始めたのには、彼女の家と弟に絡んだ秘密が・・、といったことが根底にあって、そこに、その思惑を利用する悪い武家、といった設定。
 
第三話、第四話は、「蛇の権六」騒ぎの口直しといったところ。
 
第三話の「駆け落ち」は信平が自分の家中に迎え入れたい浪人者とその妻の話。発端は、奥平家に出入りする風間という浪人者が、前話で、権六一派に襲われたお初を助けたことに始まる。その剣の腕と人柄に信平ほかが惚れ込んで家臣にと申し出るのだが、彼とその妻の静江には何か仕官できないワケアリの様子。どうやら、風間が以前滞在していた遠州の藩に関わりがありそうなのだが・・というもの。
 
第四話は、水戸家から嫁さんをもらったがために、その嫁さんと家臣に軽んじれるようになってしまった殿さんの話。いつの世も、なまじ名家から嫁さんをもらってしまうと苦労が絶えないようなのだが、この話は家臣も嫁さん方についてしまうんで、なおさら質が悪い。まあ、最後は、旦那さんの価値が見直されてメデタシメデタシなのだが、嫁さんに加担していた家老は遠ざけるか罰を与えたないとこれからの災いの種を引きずるぞ、と老婆心ながら思うところ。
 
公家武者シリーズも、松姫との暮らしも落ち着いてきて、話の展開も落ち着きをみせて円熟してきた。後口良く、さっくりと読める時代物として貴重でありますな。

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