上田秀人「御広敷用人 大奥記録7 操の護り」 「御広敷用人 大奥記録 8 柳眉の角」(光文社文庫)

2019年5月19日日曜日

上田秀人

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 「勘定吟味役異聞」シリーズで、将軍家宣の寵臣・新井白石に見出され、綱吉時代から行われた勘定奉行や豪商などによる幕府内の様々な不正を暴いてきた水城聡四郎が、今度は新将軍の徳川吉宗に見出され、「大奥」を相手に大暴れする「御広敷用人 大奥記録」シリーズの第7巻~第8巻


天英院の卑劣な罠が徳川吉宗の想い人・竹姫を襲う。彼女を護るのはなんと女忍? ー 「御広敷用人 大奥記録7 操の護り」

深川八幡宮での代参やお茶会など様々な機会を狙って「竹姫」を陥れようとするのだが、ことごとく失敗した天英院であるのだが、とうとう、少女マンガにでてきそうな「最終手段」を考え出すのだが、果たしてどうなる、というのが今巻の大きな事件である。

そして、聡四郎や竹姫を深川八幡宮で襲撃した「袖」も大きな転機を迎えることになるのだが、彼女が仕えることになったのはなんと・・・、という展開である。

【構成と注目ポイント】

構成は

第一章 女忍の誇り 

第二章 五菜の嘆き 

第三章 吉宗の策

 第四章 紅の願い 

第五章 竹姫の危機

となっていて、まずは郷忍の頭から毒針を与えられ、屋敷内での聡四郎の暗殺を命じられた「袖」がどう対応したのか、が一番目のポイント。この毒は「斑猫(はんみょう)の煮汁にぶすの根を加えたもの」で「斑猫は虫からとれる毒で、ぶすは鳥兜の根を煎じた毒で ともに心の臓の動きを止める強力な作用を持つ」ものらしく、成分を聞いただけで「毒」っぽいですね。ただ、いくら強力な毒でも、は刺さなければ効かないわけで、袖がこうした行動をとったのは、「紅」の看病と教育が効いたのだろうな。聡四郎は、伊賀者を警戒して務めを暫く休むのだが、簡単に騙されて聡四郎の策にのってしまう伊賀者は、吉宗が探索の用務から外すのも無理ないな、と納得する。

この袖を屋敷に置いておくと、江戸城から追放された、御広敷伊賀者の元頭領の藤川や伊賀の郷忍から狙われるので、竹姫付きの女中として大奥にあがるのだが、京都一条家から派遣された「鈴音」、伊賀の女忍がすりかわった「孝」、そして「袖」と竹姫周辺は「武」の達人ばかり揃えたスゴイ布陣が布かれることになる。

こんな状況になっていることも知らず、館林名松平家が潜り込ましている「五菜」の「太郎」一人で竹姫を局(つぼね)内で乱暴して、傷物にしようと、天英院と姉小路が謀略をめぐらすのだが、この二人は意気込みは誰にも負けないのだが、どうも相手をなめすぎて失敗をする傾向があるな。

とはいうものの、五菜の太郎が、竹姫を襲いに行って、簡単に袖の手によって返り討ちになるあたりは、襖に心張り棒をかまして開けられない状態にしたり、裏側に板張りをして力任せに蹴破られないように工夫するなど準備万端でもあるのだが、現場ででかくて力の強い男を翻弄するさまは、伊賀者の中でも「いささかあの美貌は惜しいが」といた評判をとる美人であるのだが、さぞや「恐ろしい」様であったのではないでしょうか。

最後は、惚れた女に悪さを仕掛けられて、天下の将軍様が怒り心頭になったところで次巻へ続くのでった。

【レビュアーから一言】

聡四郎を深川八幡宮で襲った「女忍」はしっかりと味方になって、これまた少年マンガによくある設定なのだが、そこは「紅」の人徳というものでありましょうか。

天英院や館林松平家の江戸家老の策略がことごとく失敗していくのも、刺客や配下を「モノ」のように扱っているところにあるような気がしている。やはり、人徳というのは、人を動かす「基礎」の「基礎」であるようですね。


竹姫の危難をきっかけに徳川吉宗決意。聡四郎はここからが働きどころ ー 「御広敷用人 大奥記録 8 柳眉の角」

天英院による「竹姫」襲撃に大ショックを受けて、彼女の嫁取りに吉宗が本腰をいれ始める。とはいうものの竹姫は二人の婚約者を結婚前に病死させている「不運」な娘である上に、綱吉の養女という複雑な姻戚関係になっているのでそうそう簡単には、物事は進んでいかない。

そして敵をたたきつぶそうとすると、敵は敵で他に助力を頼むのは「戦」の常で戦線がだんだんと拡大していく発端がこの巻となる。

【構成と注目ポイント】

構成は

第一章 将軍の復讐
第二章 死者の仕事
第三章 家族の想い
第四章 女の報復
第五章 待ち伏せ

となっていて、まずは前巻で竹姫が天英院の罠にはめられて大奥内で襲われそうになった事件の落とし前をつけるべく、吉宗が静かに動き始める。狙う相手は、天英院と手を結んでいる、かつて吉宗と将軍位を巡って争った「館林松平家」である。

館林松平家の江戸屋敷を使者として派遣されるのは、もちろん、水城聡四郎で、元館林藩士であった五菜の太郎こと野尻力太郎が竹姫襲撃に失敗したことと、これ以上手を出すなという牽制なのだが、その結果は、屋敷を出てからの藩士との「大バトル」というのはお決まりの流れである。ただ、残念なのはどこの藩士たちも「弱い」ことなんだよね。

そして、館林を牽制した後、吉宗の矛先は天英院に向うのだが、黙って従う彼女であるはずもなく、しっかりと京の実家に吉宗を抑えてくれるよう根回しを始める。それに対して、吉宗がうった手が「聡四郎を竹姫を側室とする根回しに京へ派遣する」という手段で、これでまた東海道で伊賀者をはじめとした敵方との争闘アクションが期待できるという設定である。

もっとも水城がその役目で派遣されたのは、吉宗によると

水城は公用とはいえ、身分が軽い。その言は、さほどの重みを持たぬ。万一、躬と竹野「間に故障(異議)を言い立てる者が出て、婚姻を長さなえればならなくなったとき、若年寄などを京へやっていては、躬の名前に傷がつく

ということで、彼の能力を評価してというところでないのが聡四郎にとっては悲しいところなのだが、道中の刺客のことを考えると彼以外には無いような気がするのだが、どうであろうか。

で、本巻のもう一つのバトルが京都への道中で、襲ってくるのが御広敷伊賀者の脱走者たちが主力とあってなかなかの強敵である。ただ、元頭領の藤川への忠誠心が薄くなっているのと、聡四郎には玄馬のほかに伊賀者の山崎伊織が加勢しているので備えは万全ですね。もっとも襲撃の周到さは、館林藩のやっつけ仕事とは段違いのできの良さと誉めておきましょう。

【レビュアーから一言】

大奥内でのどろどろとした権力争いや忍を中心とした話が続くと、どうも話が暗くなってしまうのだが、今巻でスカッとさせてくれるのが、やはり聡四郎の奥方の「紅」と女忍の女中の「袖」。竹姫の見舞いで江戸城へ行き、意地悪をしかけてくる天英院付きの中臈を脅したり、大奥取次に殺気を浴びせて怯えさせたりと強気である。もっとも仕返しをしてやると天英院を脅迫する「竹姫」も大したお姫様でありますが・・・。



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